2026-05-27

立教大学池袋キャンパス見学記 ― 煉瓦景観と材料観察を中心として ―

煉瓦研究ネットワーク関東では、このたび 立教大学 池袋キャンパスを見学する機会を得ました。

池袋駅周辺は東京有数の繁華街ですが、キャンパス内に一歩足を踏み入れると、煉瓦校舎群と豊かな植栽によって構成された静謐な空間が広がっています。都市の喧騒から切り離されたその景観は、単なる教育施設という枠を超え、「精神を養う学びの場」として構想された近代キャンパス空間であることを強く感じさせるものでした。

立教大学池袋キャンパスの赤煉瓦校舎群は、1918(大正7)年の築地からの移転に伴って整備されたものです。モリス館、諸聖徒礼拝堂、第1食堂など、現在も使用されている建築群は、英国中世ゴシック建築を源流とする「カレッジ・ゴシック」様式を基調としており、日本における近代大学景観の代表的事例として知られています。

実際にキャンパス内を歩くと、建物単体の美しさだけではなく、校舎相互の軸線や視線の抜け、並木や中庭との調和によって、空間全体に独特の秩序が与えられていることが理解できます。また、校舎群が左右対称性を強く意識して配置されている点も特徴的であり、シンメトリカルな景観構成がキャンパス全体に落ち着きと統一感を与えていました。

【写真1 本館(モリス館)】

今回の見学では、煉瓦積みそのものについても観察を行いました。案内の中で、大正期のフランス積み煉瓦建築として貴重な事例であることをご教示いただきましたが、実際に観察すると、外観は煉瓦造の意匠を保ちながら、内部ではコンクリートや鉄材によって補強されていることも理解できました。関東大震災以前から耐震性が強く意識されていたことをうかがわせる興味深い構造です。

【写真2・3 回廊空間にみられるカレッジ・ゴシック的構成】

使用されている煉瓦には、比較的焼成の堅牢なものを主体としながらも、一部に焼成不均質な煉瓦も確認されました。これらが単なる焼き損じなのか、あるいは景観上の変化を意識した意図的使用であるのかは、今後さらに一次資料などを用いて検討してみたい点です【写真5 焼成差がみられる煉瓦壁面】【写真6 焼き損じの煉瓦】。

比較事例として思い起こされたのが、旧制第四高等学校本館 です【写真7・8 旧第四高等学校本館の煉瓦意匠(比較事例)】。同建築では、白煉瓦・標準煉瓦・過焼煉瓦を巧みに組み合わせ、煉瓦そのものを意匠として積極的に用いています。立教大学の煉瓦景観についても、焼成差を伴う煉瓦が景観構成の一要素として用いられていた可能性を感じさせました。

【写真4 フランス積みの煉瓦壁面】

【写真5 焼成差がみられる煉瓦壁面】

【写真6 焼き損じの煉瓦】


【写真7・8 旧第四高等学校本館の煉瓦意匠(比較事例)】

また、見学中には3号館北側入口付近に刻印煉瓦も確認しました。煉瓦刻印は製造所や流通経路を知る上で重要な資料であり、近代建築研究においても大変興味深いものです。


【写真9・10・11 3号館北側入口他で確認した刻印煉瓦】

今回の見学を通じて、立教大学池袋キャンパスは、単なる歴史的建築群ではなく、大学景観形成、宗教空間、煉瓦意匠、そして近代材料技術の受容を複合的に示す極めて貴重な事例であることを改めて認識しました。

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